生涯にわたり痛み無く歩き続けることが出来る。

これは全ての人が希望される理想像だと思います。

しかし、関節軟骨がすり減ってしまう変形性関節症の末期になってしまうと、痛みのために歩くことが出来なくなってしまいます。

歩行時の痛みを取ってくれる手術、これが人工関節手術です。

また痛みのために活動が制限されると筋力や体力が低下してしまい、運動時の痛みをさらに増強させてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

人工関節手術では傷んだ関節軟骨部分を切除してインプラントに置き換えるため、同部位での痛みは消失します。

（手術の際に手を加える軟部組織（靱帯、関節包、筋肉など）には若干の痛みや違和感が残る方もいらっしゃいます。）

当院では人工膝関節および人工股関節の手術を行っています。

現代の医療水準において、人工関節手術は確立された手技が存在しますので難しい手術ではありません。

稀に存在する難治症例に関しては、順天堂大学整形外科教室の関連病院という特色を活かして人工膝関節においては前整形外科部長である濱田先生、人工股関節においては順天堂浦安病院前教授である一青先生にサポートを頂きながら安全な手術を提供して参ります。

今、私が医療現場において難しいと思うのは手術適応についてです。

どのタイミングで患者さんに手術を勧めたら良いのか、自問自答を続けています。

単純X線などの画像所見が悪くても、痛みがあまり無く歩行が出来ている患者さんがいる反面、画像所見がさほど悪くなくても痛みを強く訴える患者さんもいらっしゃいます。

画像所見だけで手術を勧めてはならない、また痛みの訴えや患者さんの希望だけで安易に手術を勧めてはならないと肝に銘じています。

ただ長期間にわたって痛みと闘い、筋力や体力、気力が尽きた状態で手術を受けますと、術後の成績は悪くなりやすい印象です。ギリギリまで我慢しないで、少し余裕がある状態での手術をお勧めします。

横浜鶴ヶ峰病院　副院長　整形外科部長　　武藤　治