『第29回 国際健診学会(IHEPA2025)』狐塚医師
学会名 第29回国際健診学会(IHEPA2025)
日 時 2025年1月31日~2月1日
場 所 グランドニッコー東京ベイ舞浜

2025年1月31日~2月1日にグランドニッコー東京ベイ舞浜にて第29回国際健診学会(IHEPA2025)が開催されました。
この学会のポスターセッションにて「A case of Budd-Chiari syndrome diagnosed through abdominal ultrasound and CT scan in a patient with mildly elevated γ-GTP on health checkup.」というタイトルで発表をさせて頂きました。
喜ばしいことですが、2月1日のCeremonyでencouragement prizes(奨励賞)を受賞いたしました。 簡単に内容をご紹介させて頂きたいと思います。

Budd-Chiari syndrome(バッド・キアリ 症候群)とは、肝臓からの血液の流出が静脈の狭窄や閉塞により悪くなるため、門脈の圧が上昇し、門脈圧亢進症などの症状を示す疾患と言われております。
門脈圧亢進症は、軽症の場合自覚症状を示すことはあまりありませんが、食道の血管が拡張してコブのようなものができ(食道静脈瘤といいます)突然の吐血を認めることや血液が流れないことから脾臓が大きくなり、脾臓の機能が過剰に働くことで貧血となることもあります。
定期健康診断の法定項目には、胃カメラや腹部超音波検査は入っていませんので、検査で食道静脈瘤や脾腫などの発見にはつながりにくいものと思われます。(ただし、脾腫が進行すれば腹部診察や血液検査で判明することももちろんあります)
ここで奈良宣言という日本肝臓学会で提唱された内容に関してご紹介したいと思います。
ALT(法定基本項目に含まれる肝機能検査)が30(U/L)を超える場合、かかりつけ医を受診し原因検索を行い、必要であれば消化器内科などで精密検査を受けることで肝疾患の早期発見を目指すというものです。
とはいえ、健康成人の約15%はALT値30(U/L)を超えるとも言われています。さらに生活習慣病が疑われる方では代謝性肝疾患と推定されうるために、精査されずに経過観察となっている例も見受けられます。
本症例では、奈良宣言によれば原因検索は必要な方でしたが生活習慣病があり経過観察となる恐れがございました。ですが、機会飲酒であるにも関わらずγGTP(飲酒や一部の薬により増える値です)は軽度上昇しており、血小板軽度減少がみられました。(肝機能によってはトロンボポエチン低下により血小板が減少する)
腹部超音波検査を行い、門脈圧亢進症を疑う所見があり腹部CTで最終診断に至りました。
最後に、定期的に飲酒をされている方で、採血でのγ-GTP高値を指摘されている方(特に健診では前年度と比較して大きな変化がある場合)は内科受診や保健指導などのご利用をお勧めいたします。
厚生労働省から健康に配慮した飲酒に関するガイドラインというものがございますので参考にしていただければ幸いです。(純アルコール量の把握方法についても記載があります)
第三次健康日本21では、生活習慣病のリスクを高める量として1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g,女性20gと記載されております。しかし、ガイドラインによればアルコールによる健康影響には個人差があります。また、個々の疾患の発症リスクに関しては、提示されるアルコール量は異なりますので注意が必要です。例えば大腸がんの発症リスクとなる飲酒量と食道がんの飲酒量とでは違いがあるということです。(食道がん男性では0gを超える量と記載されております)
横浜鶴ヶ峰病院 内科医 狐塚 英之
