『第65回人間ドック・予防医療学会学術大会』狐塚医師

学会名 第65回 人間ドック・予防医療学会学術大会
日 時 2024年9月6日~7日
会 場 パシフィコ横浜・会議センター

  

2024年9月6-7日にパシフィコ横浜にて第65回日本人間ドック・予防医療学会学術大会が開催されました。
この大会の血液セッションにて口頭発表「大球性貧血患者の悪性腫瘍診断にフェリチン測定が有用であった1例」をさせて頂きました。
簡単に内容をご紹介させて頂きたいと思います。

貧血は平均赤血球容積(MCV)によって、3種類に分類されます。
大球性・正球性・小球性貧血とありますが、今回特に大球性貧血に関して焦点を当てて発表させていただきました。


大球性貧血は、ビタミンB12や葉酸が不足した巨赤芽球性貧血とそれ以外の非赤芽球性貧血に分類されます。
非巨赤芽球性貧血が考えられる場合、アルコール多飲・肝疾患・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群・溶血性貧血・慢性腎不全・悪性腫瘍などが原因となっている可能性があります。


採血検査でフェリチンという項目があるのをご存知でしょうか。
貧血の精査で、特に小球性貧血ではフェリチンの測定が必要とされています。
フェリチンは鉄貯蔵蛋白質であり、体内の貯蔵鉄量の指標と言われています。

フェリチン値が高値を示す場合として、鉄過剰である可能性以外に体内に炎症疾患があり鉄の偏在化が起こっている可能性や悪性腫瘍が考えられます。
悪性腫瘍の補助的な診断に用いることがあることも考慮にいれ、大球性貧血でもフェリチンの測定を行うことは意義があると思われます。もちろん、巨赤芽球性貧血ではビタミンB12治療中に鉄欠乏に至る可能性があり定期的なフェリチン値の評価が必要です。

発表させていただいた症例は、非巨赤芽球性貧血でしたが、フェリチンは基準値を大きく上回っており悪性腫瘍を積極的に疑い精査を行いました。

最終的に固形腫瘍との診断に至りましたが一般的な腫瘍マーカーは陰性でありフェリチンが診断に大きく貢献した例と考えられます。

なお、鉄過剰という単語が出てきたため鉄に関して、どの程度摂ればよいかという疑問を持たれている方もいるかと思います。

厚生労働省が日本人の食事摂取基準(2020年版)を公開しており、推奨する量や上限量に関して記載がございますのでご参考にしていただければ幸いです。

横浜鶴ヶ峰病院 内科医 狐塚 英之

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