『第52回 日本肩関節学会学術集会』渡邉医師
学会名 第52回 日本肩関節学会学術集会
日 時 2025年10月10日~11日
場 所 福岡国際会議場

このたび、2025年10月10日より福岡で開催された「第52回日本肩関節学会学術集会」に参加しましたのでご報告させて頂きます。
日本肩関節学会は、肩関節に関する世界で最も歴史のある学会の一つであり、これまで国内外に向けて価値ある知見と技術を継続的に発信してきた学術団体です。
今回の学術集会では、「学而不厭(がくじふえん):継続的探究と次世代への継承」というテーマのもと、肩関節に対する尽きることのない探求心と、次世代への知識・技術の継承という理念が掲げられました。
学会では特に
「肩関節手術の長期成績と未来への課題」
「高齢化に伴う肩関節疾患とその克服」
「肩関節手術の成績向上に向けた工夫と基礎的探求」
という3つの柱を中心に、最新の知見と技術の共有、そして活発な議論が展開されました。
今回学んだことの中で印象的だったこととして以下のようなものがあります。
1.未解明だった肩関節疾患の病態に対する理解の深化
従来、病態が不明瞭とされてきた凍結肩(いわゆる五十肩)や腱板機能不全などの一部の病態について、関節包内の炎症反応や微小循環障害、サイトカイン動態など、より深い病態生理の理解が進んでいることが報告されました。
2.エコーを活用した診断・治療の広がり
超音波検査は、腱板断裂や石灰沈着、滑液包炎といった肩関節疾患の非侵襲的評価だけでなく、動的評価や、エコーガイド下での注射・ハイドロリリースなど治療面への応用も急速に進化しています。
今後、より質の高い外来治療を行うための重要なツールであると実感しました。
3.関節鏡視下手術の新展開
肩関節鏡手術において、修復不能な腱板断裂や再断裂リスクの高い広範囲腱板断裂に対する新たなアプローチが数多く発表されました。特に、
筋前進術( muscle advancement technique)
EX-medialization(骨頭上方の大幅な切除による腱板付着部の内方化)
上方関節包再建術(Superior Capsular Reconstruction)
といった日本人医師によって考え出された世界に誇れる術式に関して多くの報告がありました。選択と応用によって、従来であれば機能再建が難しかった症例にも対応可能となっており、腱板修復の成功率や術後成績の向上に向けた治療戦略の多様化を強く感じました。
4.リバース型人工肩関節置換術の進化
高齢化社会を迎えるなか、腱板断裂性関節症や変形性関節症などに対するリバース型人工肩関節置換術の重要性が一層高まっています。
学会では、適応判断・術前計画・インプラント設置技術・術後リハビリ戦略など、術後成績のさらなる向上に向けた具体的な工夫が多数報告されていいました。
学会で得た最新知見と技術を、今後の診療・手術戦略に積極的に反映させ、患者さん一人ひとりの症状に合わせた、わかりやすく丁寧な医療をお届けできるよう日々の診療に励んでまいります。
横浜鶴ヶ峰病院 整形外科部長/肩・膝・スポーツ・関節鏡センター長 渡邉寿人
