『第24回 日本抗加齢医学学会総会』狐塚医師

学会名 第24回 日本抗加齢医学学会総会
日 時 2024年5月31日~6月2日
場 所 熊本城ホール

2024年5月31日~6月2日熊本城ホールにて第24回日本抗加齢医学会総会が開催されました。

複数の教育公演や専門医講習会などがありましたが、この中で印象的であった教育公演である女性の脂質異常症治療に関しての内容を簡単にご説明させていただきます。

閉経後脂質異常症に対する治療(高リスクや二次予防は除く)として患者さんに更年期障害がある場合、HRT(ホルモン補充療法)が適応となる。
HRTの禁忌でなければ生活習慣の改善に加えHRTを3 ~ 6 カ月間施行し再度脂質検査を行う。
改善が悪ければスタチンやフィブラート系薬剤を追加する。
脂質検査以外にも体重や腹囲の変化に目を向けることが大切である。
医師による声掛けが効果を示すことが多い。
HRTはエストロゲンと黄体ホルモンを併用して行うことが多い。
エストロゲンに関しては経口CEE(結合型エストロゲン)あるいは経皮E2(エストラジオール)が用いられることが多い。
肝初回通過により経口CEEでは中性脂肪が増加するが、LDLコレステロール低下(HDL上昇)作用は認める。
肝機能異常や中性脂肪が高い場合は経皮製剤を推奨する。
経皮E2は中性脂肪の増加は目立たないがLDLコレステロール低下作用は弱い。
経口CEEは、エストロゲン肝刺激により銅イオンの産生を促し、銅イオンはフェントン反応により活性酸素の産生を誘導する。(酸化ストレスの増大)
黄体ホルモンの一部はアンドロゲン性が高いものがあり、エストロゲンによる肝臓の影響を抑える役割があると考えられる。

上記の特徴を踏まえ、エストロゲンと黄体ホルモンについての組み合わせを考えることが重要である。

生活習慣の改善については動脈硬化性疾患予防ガイドラインが参考になる
特に食事療法についてご紹介する。

➀過食に注意し、適正な体重を維持する。
 総エネルギー摂取量(kcal/日)は、一般に目標とする体重(kg)×身体活動量
(軽い労作で25〜30、普通の 労作で30〜35、重い労作で35〜)を目指す。
目標とする体重は年齢によって異なる。総エネルギー摂取量を把握することは大切である。

②肉の脂身、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える。

③魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する。
→脂肪エネルギー比率を20〜25%
飽和脂肪酸エネルギー比率を 7 %未満(魚n-3 系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす)
コレステロール摂取量を 200 mg/ 日未満に抑える。
トランス脂肪酸の摂取を控える。(菓子類など注意)

④野菜、海藻、大豆の摂取量を増やす。

⑤食塩の摂取は 6 g/日未満を目標にする。
→炭水化物エネルギー比率を50〜60%とし、食物繊維は 25 g/日以上の摂取を目標とする。
いわゆる日本食が推奨される。(ただし塩分は少な目で)

⑥糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える。

⑦アルコールの過剰摂取を控え、25 g/日以下に抑える。
→特にアルコールと果物は中性脂肪と関連する。

横浜鶴ヶ峰病院 内科医 狐塚 英之

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