『第36回 日本臨床内科医学会』狐塚医師

学会名 第36回日本臨床内科医学会
日 時 2023年10月8日~9日
場 所 ホテル日航福岡

2023年10月8-9日にホテル日航福岡にて第36回日本臨床内科医学会が開催されました。

複数の教育公演や心電図判読などの実践セミナーや産業医講習会などがありましたが、この中で印象的であった教育公演である不眠症の治療に関しての内容を簡単にご説明させていただきます。

2024年度から健康日本21の第3次が開始するが、生活習慣の改善の項目のうち、休養の項目が休養・睡眠と変わり「睡眠時間が十分に確保できている者の増加」という内容が追加されている。米国の「Healthy People 2030」においても同じような指摘があることもあり、睡眠の質だけでなく量にも注意を向ける必要がある。

 現在、特定健診での問診では「睡眠で休養が十分とれている」という質問があるが時間に関しての質問はない。しかし今後睡眠時間に関する内容についての項目が増えることも考えられ保健指導においても睡眠について指導する機会が増すと考えられる。

外来や保健指導などの場面で重要なことは60歳を境に必要な睡眠時間に違いがあるということであり、「60歳過ぎたら床に8時間以上つかない」と説明するとよい。

逆に若年者では6時間以上の睡眠をとることの必要性を説くとよい。(20-59歳は6-9時間)

 不眠症とは不眠症状だけではなく昼間の問題(倦怠感、我慢できない眠気)などがあることで診断がなされることに留意しつつ身体疾患(COPDなど)の除外をしつつ睡眠衛生指導をまず行う。またすでに通院中の方で降圧剤(血液脳関門を通過しやすいもの)を処方している場合検討を要する。

ここで睡眠障害対処12の指針(睡眠障害の対応と治療ガイドライン)をご紹介したい。 

➀睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

 しつこいですが、60歳過ぎたら床に8時間以上つかないことです。

②刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法

 就寝前4時間のカフェイン、1時間の喫煙は避けましょう。

③眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない

 あまり不眠に対して不安感が強いと外的条件付けで不眠症になる方もいます(精神生理性不眠症)

④同じ時刻に毎日起床

 寝だめをすると社会的時差ぼけの原因となります

⑤光の利用でよい睡眠

 目が覚めたら日光を取りいれ体内時計をリセットします。実際昼夜逆転の治療でも光を使うことがあ ります。

⑥規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

 運動習慣は熟睡を促進します

⑦昼寝をするなら、(床にはいる)15時間前の20-30分

 昼寝を30分以内にすれば認知症を予防効果、一方1時間以上で認知症リスク2-3倍 と言われています。

⑧眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

 床で長く過ごしすぎると熟眠感が減ります。床上時間を変更して治療する不眠症に対する認知行動療 法があります。(睡眠制限法)

⑨睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

 身体疾患の精査が必要です。

⑩十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に

 ナルコレプシーなどの可能性もあります。車の運転に注意です。ドライバーでは点呼時に睡眠不足のチェックがすでに義務づけられています。

⑪睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

 アルコールは眠気を促すが3-4時間経つとアルデヒドとなり覚醒を促すと言われています。

⑫睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

 ベンゾジアゼピン系睡眠薬は依存があるとして知られており海外でも厳しい使用制限(日本よりも) がありますが、最近ではオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬などが使用されています。(オレキシン受容体拮抗薬はレム睡眠を増やす薬剤があり、レム睡眠を増やすことが認知症の予防につ ながるのではないかというお話もあった。なお、悪夢などの副作用もあるので処方後には問診が必要です)

今後はアプリによる不眠症に対する認知行動療法の保険収載が期待されます。

横浜鶴ヶ峰病院  内科 狐塚英之

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