『新型コロナウイルスと免疫・明日に向かって#2』

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除され、一か月が経過しました。国内では減少傾向が続いており、日本での第5波はほぼ終息したと考えています。昨日は、各都道府県の全てにおいて、一桁の患者数迄に激減をしました。
何故、第5波が減速・終息したかの要因・原因は定まっていません。厚生労働省に感染対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」は、ワクチン接種率の向上、市民や事業者の感染対策への協力のためと分析をしています。過日、アドバイザリーボードの座長である国立感染症研究所所長が「第5波は、若者に始まり、若者で終わった」と申しておりました。私的には、①接種の有無にかかわらず若者の免疫機能が、新型コロナウイルスより勝っていた為に感染はするが無症状で済むことが多かった(絶対ではない)。②ワクチン接種済の高齢者に感染しなかった。③デルタ株ウイルスが当初言われていた程に感染力が強くなかった事及び重症化率もアルファ株と同等レベルであった、等々の理由ではないかと考えていました。先週それを裏付ける様な研究成果が発表されました。デルタ株の遺伝子変異により、ウイルス本体の酵素作成能力の減退により自己複製能能力が下がっているという趣旨の報告でした。それらの理由に加えて更に、日本人特有の清潔感、マスク着用率の高さ、真面目な気質が寄与していることは言うまでもありません。

現在、65歳以上の高齢者のワクチン接種率は9割、50代は8割、40代でも7割の方が2回接種を終了しています。ワクチン接種を未だ受けていない30代20代の若者においては、免疫機能が高齢者の方に比べて高いことが知られています(いろいろな疾患既往歴があり、治療中の方は除きます)。

免疫機能と言っても多岐にわたりますが、よく知られているのは、血液中を巡回しているリンパ球の一つであるNK細胞ではないかと思います。NKとはナチュラルキラーの略で、その名の通り自然に、ウイルスに感染した細胞やがん細胞をある程度殺す機能を持っているリンパ球です。この細胞がウイルス感染等侵入の様な緊急事態の際に最初に発動する細胞です。このNK細胞の活性力は、加齢と共に低下する事、ストレスで低下する事、がんになると(なったから)低下する事等々がよく知られています。

この自然免疫機能を下げないことが大切です。その為に重要なのは、前回#1の「明日に向かっての10か条」です。

この自然免疫機能が保たれていないと、ワクチンによる新型コロナウイルスに対する特異的な免疫機能(抗体)が誘導されにくいと想定されます。ワクチンにより自然免疫機能にスイッチが入り、連続的に特異的免疫機能発動の為には、自然免疫機能を下げないことがとても重要です。自然免疫を下げないことが、感染予防にも極めて重要です。

現在感染者数激減状況下ですが、油断大敵です。新型コロナウイルスは、何処かで潜伏して再起を図っているのは間違いがありません。密かに再拡大を狙っているのかもしれません。ウイルスとは、そういった輩のものです。

此れからウイルスの大好きな低温(生体免疫機能低下)・乾燥(ウイルス乱舞)する冬の季節に向います。今はシッカリ此方人間の側で、防衛体制を構築するべき時期です。

従来からの、三密(密集、密接、密閉)を避ける、プラス自然免疫機能向上に努める事がこの時期はとても大切です。免疫機能向上には時間が必要です。今からしっかり準備して下さい。遅くはありません。

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック再生医療センター・免疫療法室長 矢野間俊介

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