『窒素死について』

タイの洞窟に、9日間食事を取れない状態で閉じ込められていた13人は記憶に新しい。
我々の体は炭水化物をほぼ1日で使い果たし、その後、脂質、最後にたんぱく質が使われ約1週間程度でたんぱく質が使い込まれる。たんぱく質が使い込まれると、免疫力が低下して感染症で死亡する。これを「窒素死」という。
タイの洞窟で、子供の下肢にイソジンを塗っていたのを覚えているだろう。感染症を防ぐためである。

この話をしたのは、最近の老人を診察する度に低タンパク質症の患者が多いのに気づいたからである。
高齢者の場合、脳梗塞、腰痛、COPD,認知症、寝たきり老人、萎縮性胃炎、入れ歯などの基礎疾患により、嚥下機能の低下および食欲低下、消化機能の低下に繋がる。高齢者は、若い人よりたんぱく質摂取量を1.2倍必要とされているのは、おそらく吸収力の低下を予測しているのであろう。

大学入試後、両親から離れ食事の内容は自由になる。しかし、自由を謳歌するほど、栄養学に熟知しているだろうか?
あらゆる年齢層に於いて、もっと栄養学を勉強すべきである。

横浜鶴ヶ峰病院 院長  石山泰二郎

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